
――理解されない苦しみを抱えたまま支え続けるあなたへ
「この人、本当に悪いと思ってるんだろうか」
「何度言っても伝わらない。私の気持ちなんてどうでもいいのかな」
発達障害の特性を持つパートナーや家族を支えている人の中には、そんな思いを抱えながら日々を過ごしている方が少なくありません。
中でも厄介なのが、「困っている様子がない発達障害」のタイプです。
忘れ物も多く、感情の起伏もあるのに、本人はどこ吹く風。
他人への影響を顧みず、我が道を行く。
心ない言葉を投げつけても何食わぬ顔で過ごしている。
カサンドラ症候群に陥る人の多くが、そんな「困り感のない相手」に心を傷つけられています。
■ 「困り感のない発達障害」とは
一般的に発達障害と聞くと、「生きづらさを抱える人」「日常生活で困っている人」というイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし、すべての人がそうではありません。発達の特性を持っていても、それを“自分の課題”として感じていない人もいます。
たとえば、
・他人への共感が乏しく、相手の感情を想像できない
・社会的ルールより「自分の都合」を優先する
・指摘されても「自分は悪くない」と跳ね返す
こうした人たちは「困っている自覚」がなく、周囲の手助けや忠告も「うるさい」と感じる傾向があります。
結果として、サポートする側だけが苦しみを背負う形になってしまうのです。
■ 「相手の問題」と「自分の疲れ」を切り分ける
まず、一番に意識してほしいのは、相手の態度によって生まれるストレスを“自分の責任”と誤解しないことです。
「私が言い方を間違えたのかも」「もっと優しく伝えればよかったかも」――そんな風に自分を責め続けると、心はどんどん消耗します。
相手の発達特性は、あなたが背負う問題ではありません。
その人の「認知の傾向」や「課題」として理解することが、まず第一歩です。
距離を取ることを「冷たさ」だと感じる人もいますが、自分を守るための境界線を引くことは、立派な対処です。
■ 感情のままに伝えても伝わらない
カサンドラ症候群に陥る人が最も苦しむのは、「伝えたのに伝わらない」という経験です。
何度も話し合おうとしても、「俺は悪くない」「それくらい普通だろ」と跳ね返される。
そんなとき、怒鳴っても、泣いても、相手に響かないことがあります。
それは、相手があなたの感情を理解する能力に限界があるからです。
つまり、「あなたの努力不足」ではなく、「伝わり方の回路が違う」だけのこと。
怒りや悲しみを爆発させる前に、一歩引いて「どう伝えたら理解されやすいか」を考えることが大切です。
■ 伝える前に整えておきたい3つの視点
- 伝えたい目的を明確にする
「謝ってほしい」「反省してほしい」という期待ではなく、「状況を知ってほしい」「再発を防ぎたい」と、目線を具体的にする。 - 感情ではなく事実を中心に
「あなたはいつも無神経」ではなく、「昨日のあの言葉で私は悲しい気持ちになった」とできるだけ具体的に伝える。 - 相手の認知のクセを踏まえる
発達障害の傾向が強い人は、抽象的な表現が苦手です。
「もう少し思いやりを持って」では伝わりません。
「相手の話を5秒だけ聞いてから答えてほしい」など、行動レベルで具体化しましょう。
■ 指摘の目的を「理解」ではなく「共有」に変える
「理解してほしい」という願いは強い一方で、相手に共感を求めすぎると多くの場合うまくいきません。
それよりも、「私たちは違うけれど、こういうズレが起きている」という“共有”に切り替えた方が現実的です。
あなたが冷静に伝える内容は、相手に「指摘された」と感じさせず、「状況の確認」として受け取られやすくなります。
――「気づかない相手」にどう自覚を促すか
「何度伝えても響かない。どうしたら少しでも気づいてくれるんだろう」
そんな思いの中で、希望と絶望を行き来している方へ。
ここでは、相手の「特性を責める」のではなく、「自覚のきっかけを与える」ための現実的な方法を考えていきます。
■ 第三者の意見を活用する
直接言っても響かない人でも、「他人の言葉」には反応することがあります。
あなたの代わりに、専門家や信頼できる第三者が間に入ってくれると、相手が少し受け止めやすくなる場合があります。
カウンセリングや発達障害に理解のある医師を通して話をするほか、夫婦カウンセリング、職場であれば産業医や人事への相談も選択肢です。
本人が診断に抵抗を示しても、「相談」レベルから始めることで少しずつ意識の変化を促せることがあります。
■ 「責める」ではなく「一緒に解決していく」姿勢を示す
「あなたが悪い」と糾弾されると、相手は防衛的になり、改善意欲を失います。
「どうすれば一緒にうまくやっていけるか」「お互いのために考えたい」と伝えると、拒絶されにくくなります。
たとえば、
「あなたの行動で私は傷つく。でも、どうしてそうなってしまうのか、理由を一緒に探したい」
というように、「あなたVS私」ではなく「問題を一緒に見る」形で話すことが大切です。
■ 小さな成功体験を積ませる
発達障害のある人の中には、「指摘されること」に極端に弱いタイプもいます。
怒られたり否定されると、途端に意識が閉じてしまう。
そのため、「できたこと」に焦点を当てて小さな変化を認めることが効果的です。
「昨日、約束を覚えていてくれたね」
「前より会話が落ち着いてたね」
そうした言葉は、相手の自覚を伸ばし、次のステップへの動機づけになります。
■ 無理をしてまで伝え続けなくていい
それでも改善が見られない場合、無理に関係を続ける必要はありません。
相手に変わる意思がない限り、あなたが傷つき続けるだけです。
理解されないこと、変わらないこと、それも「現実の一部」として受け入れてよいのです。
受け入れるというのは、諦めることではなく、自分を守る決断です。
■ 自分を支える時間を持つ
相手の問題に向き合うだけでなく、あなた自身の回復にも時間を割いてください。
カウンセラーとの対話、趣味、散歩、静かな時間――どんな形でも構いません。
「何もしない時間」が、心を修復する仕事をしてくれます。
それでも辛くなったら専門機関への相談を
どんなに努力しても、相手が変わらないとき、あなたの心は限界を迎えます。
無理を続ければ、心身のバランスを崩してしまうこともあります。
そんなときは、迷わず専門機関に相談してください。
・心療内科やメンタルクリニックでの診察
・地域の精神保健福祉センターの相談窓口
・臨床心理士やカウンセラーとのカウンセリング
一度話を聞いてもらうだけでも、視点が変わり、心の重さが少し軽くなります。
専門家は、あなたの「頑張り」と「苦しみ」の両方を理解してくれる存在です。
相談することは、弱さではなく「生き方を立て直すための手段」です。
あなたが支えられてきた分、今度はあなた自身が支えられる番です。
あなたが少しずつ心を取り戻し、自分のペースで息をつける時間を取り戻せますように。
相手を変えるより、まずあなた自身を大切にすることが、すべての始まりです。

