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嫌な記憶が繰り返し思い出される。辛い日々から抜け出すためには

―カサンドラ症候群と“フラッシュバック”の苦しみ


あのとき言われた言葉が、頭から離れない。
日常の何気ない瞬間に、ふと心が引き戻されるように過去の記憶が蘇る。
思い出したくないのに、何度も繰り返し思い出してしまう。

そんな苦しさに、息が詰まるような毎日を過ごしていませんか。

発達障害のあるパートナーを支える中で、理解し合えない辛さや孤独、そして心ない言葉に傷ついた経験を抱えている方は少なくありません。
「私が悪かったのかもしれない」「冷たくされたのは私のせいなのかも」
そうやって自分を責めながら、何度も同じ痛みを反芻してしまう。

その状態を私たちは、カサンドラ症候群の一つの現れとして見つめていくことができます。


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■ 忘れようとするほど、記憶は強くなる

つらい記憶を「もう思い出さないようにしよう」と努力してみても、思考は逆の方向へ動いてしまうことがあります。
心理学では「白クマ実験」という有名な例えがあります。
「白クマのことだけは考えないでください」と言われると、かえって白クマのイメージが浮かんでしまう。

心も同じです。忘れようと抵抗するほど、記憶の痕跡はより深く意識に刻まれます。
だから、まずは「思い出してしまう自分」を責めないことが大切です。

あなたが悪いわけではありません。
それは心が「まだ整理できていない出来事」に反応している、自然な防衛反応です。


■ フラッシュバックのメカニズム

強いショックを受けたとき、私たちの脳は「その出来事を安全に保存する」処理が追いつかなくなります。
普通の記憶のように、時間が経てば薄れていく流れが機能しないのです。
その結果、まるで現在進行形のように当時の映像や感情が再生される。

・あの時の声のトーンを思い出す
・表情やしぐさが頭に焼きついて離れない
・無意識のうちに体がこわばる

これが「フラッシュバック」と呼ばれる状態です。
心がまだ「安全な場所に戻る道」を探している合図でもあります。


■ 「心の安全」を取り戻すためにできること

フラッシュバックが起きたとき、私たちはつい「考えを止めたい」と思ってしまいます。
けれども大切なのは、無理に止めることではなく、「今ここにいる自分」を感じることです。

たとえば次のような方法があります。

・冷たい水で手を洗って温度を感じる
・深く息を吸って、ゆっくり吐くことに集中する
・目に見えるものを三つ、耳に聞こえる音を三つ、順番に意識する

これは「グラウンディング」と呼ばれる方法です。
フラッシュバックで心が過去に引き戻されそうになるとき、五感を使って“今”の現実に戻る手助けをしてくれます。


■ 自分を守る境界線を持つ

カサンドラ症候群の人は、相手を理解しようとするあまり、自分を犠牲にしてしまうことがあります。
相手との関係性の中で、心の傷を繰り返し受け続けると、記憶が癒えないまま再生される原因になります。

「この話題は聞かない」
「疲れているときは会わない」
「返信するタイミングは自分で決める」

こうした小さなルールを決めることは、自己防衛でもあり、回復の第一歩です。
境界線を持つことに罪悪感を覚える必要はありません。
それは、あなたが「これ以上は痛みたくない」と自然に感じているサインなのです。


――「思い出してしまう夜」を少しずつ癒やすために


■ 「回避」ではなく「安心」を積み重ねる

つらい記憶を避けようとするほど、記憶は別の形で浮かび上がってきます。
大切なのは、「その場を安全に乗り越えた」という体験を心に積み重ねていくこと。

たとえば、嫌な記憶が浮かんだときに、「私は今、過去ではなく、この部屋にいる」と声に出してみる。
それから、温かい飲み物を飲む、落ち着く香りをかぐ、やさしい音楽を流す。
感覚を通して、「もうあの時とは違う。今は安全なんだ」と心に伝えることができます。

この小さな積み重ねが、脳に新しい感覚の記憶を形づくっていきます。


■ フラッシュバックをやわらげる具体的な手法

次の方法は、臨床心理の現場でも取り入れられている「セルフ・ケア的」アプローチです。

  1. 書く
    記憶に圧倒されそうなときは、心の中を安全に外へ出すことが大切です。
    起こった出来事を書き出すのではなく、今の気持ちを書いてみてください。
    「思い出してつらい」その一文だけでも十分です。
    書き終えたら紙をたたみ、「今日はここで終わり」と自分に区切りをつけます。
  2. 呼吸を整える
    フラッシュバックの瞬間は、呼吸が浅くなりやすい状態です。
    吸う息よりも少し長く吐くように意識すると、体が落ち着きを取り戻します。
    「息をゆるめる」ことが、心の鎮静に直結します。
  3. 身体感覚を優先する
    体を軽く動かす、毛布に包まれる、温かいお茶を飲む――
    五感を通して身体感覚を思い出すことで、過去の記憶から離れやすくなります。

■ トラウマに「意味づけ」をしようとしないで

人は苦しみを経験したあと、「なぜ自分がこんな思いをしたのか」と理由を見つけたくなります。
しかし、傷の最中に意味を探すことは、心を余計に疲弊させることもあります。

「わからないまま」でもいいのです。
それでも、あなたは今ここにいて、日々を生きている。
その事実が、回復の道のりそのものです。


■ 少しずつ「記憶の距離」をとる

嫌な記憶を完全に消すことはできません。
けれど、その記憶と「心の距離」を少しずつ広げることは可能です。

たとえば、思い出したときに、こう言ってみてください。
「今、つらい記憶が浮かんでいる。でも、私はそれを客観的に見ている。」
そう語りかけることで、記憶と自分を「同化」させずに済みます。

少しずつ、あなたの中で“過去”が“過去”として存在できるようになります。


■ 誰かに話してもいい

フラッシュバックの痛みは、ひとりで抱えていると膨らみやすくなります。
信頼できる人、あるいは専門家に話をすることで、「安全な場所で語れた」という安心が生まれます。

カウンセラーや心理士に相談することは、弱さではありません。
それは、自分を守るために「助けを呼んだ勇気」そのものです。


■ 心の回復は“忘れる”ではなく“癒えること”

嫌な記憶を「忘れる」ことが目標ではありません。
思い出しても、もう心が大きく揺れない状態になったとき、それが癒えたということです。

その日に向けて、ゆっくりでいいのです。
焦らず、あなたのペースで。


あなたが今日、少しでも穏やかに呼吸できる時間を取り戻せますように。
思い出しても、もう大丈夫だと自分に言える日が、きっと近づいています。

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